あの頃のオレPartⅥ

学生の頃の話だ。

当時対戦ゲームにはまっていたアホなオレ達は、いつも空腹だった。
食費を削ってまで、ゲームにはまっていた。

いつものように商店街をぶらついていると、新規オープンの看板を発見した。
いまではあちこちにある、天丼のチェーン店だ。

値段は天丼にしてはかなり安い。
しかしなによりオレ達の目を引いたのは

定食メニューはライスおかわり自由

これだ。
全員の目がきらりと光る。
天ぷら定食。天丼よりやや値段が高いが、5つほどの天ぷらが皿に持ってある。
これでおかわり自由なら、コストパフフォーマンスは定食のほうが上だ。

店内に入り、全員が定食メニューを注文する。

よし。
おもむろに箸を手に取り、食べ始める。
もちろん、ライスおかわり前提のペース配分だ。

そのペースは「天ぷら1個でライス1杯」
しし唐であろうが、キスであろうが、芋であろうが、1個で1杯という目標である。

黙々とかきこむように食べる。

「おかわり」

おばちゃんが愛想良く、

「たくさん食べてねぇ」

とおかわりを持ってきてくれる。
どうやらまだ我々の目論見には気づいていないようだ。

2回目のおかわり。

おばちゃんは、はいはい、とまだにこやかだ。

3回目のおかわり

「良く食べるねぇ!学生さん?」
「そうなんですよ~」

さすがに4杯目になると、ギブアップするものも出てきた。

しかし、一番体の大きい友人はついに5杯目。

おばちゃんも、体が大きいからねぇ。と苦笑い。

久々にはちきれそうなほど食べたオレ達は
「次から昼飯はここにしよう」
と、とんでもない取り決めをおこなった。

さすがに毎日では飽きるので、週に2、3回だったが、行くと必ず3杯は食べた。

そして1ヶ月ほど立ったある日、
「よし、今日も行くか」
と気合を入れて店の前に行くと・・・

「定食のおかわりサービスは終了いたしました」


「他へ行こう」

オレ達は踵をかえした・・・